水仙月の四日 The Fourth of the Narcissus Month(CD)
型番 |
ISBN: 978-4-902486-05-6 |
原作:宮沢賢治
音楽:間宮 芳生
語り:岸田 今日子、Liane Aukin
英訳:C. W. Nicol、谷川雁
賢治童話のなかでももっとも人気の高い作品の一つ、しかし水仙月は何月と聞かれて即答できるひとは多くないでしょう。答えは四月、冬の間に焼かれた炭を父親といっしょにそりで町まで運んだ少年は、一足さきに帰る途中、春の雪嵐に巻きこまれてしまいます。おそいかかる吹雪のさまが比類なく美しいことばでつづられたこの物語は、賢治の天才をあますところなく示しています。
[本文より]
He dropped his gaze to the foot of the hill.
雪童子は眼を丘のふもとに落しました。
Along the narrow snowy trail that skirted the slopes the little boy in the red woolen blanket came hurrying as hard as he could for his mountain home.
その山裾の細い雪みちを、さつきの赤毛布(あかけっと)を着た子供が、一しんに山のうちの方へ急いでゐるのでした。
"Yesterday, he was helping to push the sledge of charcoal.
「あいつは昨日、木炭(すみ)のそりを押して行つた。
Now he's got some suger and is coming back alone."
砂糖を買つて、じぶんだけ帰つてきたな。」
With a chuckle, Snow Cherub tossed the branch of mistletoe he was holding at the boy.
雪童子はわらひながら、手にもつてゐたやどりぎの枝を、ぷいつとこどもになげつけました。